プロフェッショナルに聞きました

水虫は他人事じゃない!? 日本人の4人に1人は水虫なんです!

仲皮フ科クリニック 仲 弥先生

日本人の4人に1人が水虫かも!? そんなショッキングなお話を聞かせてくださったのは、仲皮フ科クリニックの仲弥先生。意外と身近な足のトラブル、水虫治療のエキスパートとして知られる仲先生に、水虫にまつわるエピソードや家庭でできる予防法を伝授していただきました。

プロフィール

仲皮フ科クリニック 仲 弥先生

医学博士、仲皮フ科クリニック院長。慶應義塾大学医学部卒業後、皮膚科教室に入局。その後慶應義塾大学医学部皮膚科の医局長・医長、専任講師を経て、96年より埼玉県川越市に仲皮フ科クリニックを開業。現在、埼玉県皮膚科医会会長、日本臨床皮膚科医会参与、日本皮膚科学会代議員、日本医真菌学会評議員などを務めるとともに全国各地で最新の水虫治療などについて多数の講演を行っている。著書に「水虫は1か月で治せる」(現代書林)など。仲皮フ科クリニック → こちら

日本人の4人に1人が水虫!?

 水虫は他人事と思っている人も多いかもしれませんが、実は非常にありふれたものです。その割合は、日本人の4人に1人。というのも、2007年に行われた日本臨床皮膚科医会の調査で、全国の4万人以上の皮膚科患者にいっせいに足を見せてもらい、水虫にかかっているかどうか調べたことがあります。その結果、4人に1人の割合で水虫が見つかったのです。しかも、水虫が理由で来院した人は除いて検査しましたから、水虫の自覚なしに保有している人が4人に1人はいるということになります。それくらいありふれたものなんです。
 ちなみに水虫は、暖かいエリアに多いイメージがあると思います。北欧あたりは清潔そうなイメージもありますしね(笑)。しかし、実際はまったく逆。北の方が多いんです。ロシアなんか特に多いですね。なぜなら、夏でも冬でも、そして家の中でも靴を履いているから。逆に、タイやマレーシアなど暖かい国だと、サンダルや裸足が基本。風通しもいいですから、水虫が少ないんですよ。
 また、年齢が高くなるほど、水虫の保有率は上がります。80歳、90歳になると7割くらい。白癬菌は、長い年月が経ちますと人間と共生するようになりますが、最初は菌は異物なので、人間の皮膚はそれを排除しようと抵抗します。そのため、水膨れや赤くなったりかゆくなったり、と反応を起こすわけです。これが、急性型といわれる水虫です。しかし、この急性型を毎年繰り返していると、そのうち菌とお友達になってしまい、追い出そうとしなくなってしまう。そうするともう、赤みやかゆみが出ないんですね。だから、水虫だという自覚が全くなくなってしまう。これが慢性型です。急性型も慢性型も反応が違うだけで、菌自体は同じ。さらに年齢を重ねるにつれて、代謝が落ちていくので、余計に慢性化しやすいのです。
 一方で、若い人たちも靴などファッションの変化により、水虫になりやすくなっています。特に女性はハイヒールやストッキングを日頃から身に着けるなど、かかとが高く足先が縮まった状態になり、足の指がくっつきやすい。菌は温かくて湿ったところが大好きですから、指の隙間についた菌は増殖しやすいのです。一般的に足の指が細くて付け根の部分があいてる人は水虫になりにくく、ソーセージ型でポチャッとした人が水虫になりやすいのですが、ハイヒールの先で足をつぼめてしまうことで、人工的にその状態を作ってしまうんですね。加えて長時間、靴やストッキングとか履けばどうしても蒸れますし、悪化してしまう。また、ブーツも特に蒸れます。ブーツの中は湿度が100%ですから菌が繁殖しやすいんです。こまめにぬいだり、靴を変えたり、はき回しをすることが重要です。ですから、若い、特に女性の患者さんの数は増えています。

摩擦を避けて、1日1回足をキレイに!

 水虫のもとになる白癬菌は、日常の環境にたくさん潜んでいます。しかし、たとえ菌が足についても、すぐに感染するわけではなく、24時間くらいかけて、ゆっくり菌糸をだしながら角質の中に入っていくもの。その間に足を洗ってしまえば大丈夫です。でも、丸1日洗わないでいると中に入り込んでしまうことがあります。通常、最低1日1回洗っていれば、たとえ菌がついても水虫になることはありません。
 また、水虫菌は、角質の中でしか生きていけません。だから、予防には、足の健康のためにも角質を減らしておく方がいい。しかし、摩擦を加えるのはよくありません。やすりや軽石なども、こするという行為がよくないのです。人間の皮膚は、こすっているとどんどん硬く厚くなります。また、色が黒くなったりもしますので、皮膚によくありません。足を洗う時もブラシややすりでごしごし洗うのはよくありません。石鹸を泡立てて手で軽く洗うだけで十分です。また、軽石ややすりでこすってしまうと傷がついてしまい、菌が中に入りやすくなってしまうということもあります。健康な皮膚の場合、菌は自分でケラチンを分解しながら皮膚の中を掘り進んでいかなくてはならないのですが、皮膚に傷があると、通常1日かけて入っていく菌が半日で入ってしまう可能性もある。ですから、目に見えない小さな傷もなるべくつけないようにした方がいいですね。
 家族に水虫の人がいる場合は、菌と接触する機会が増えますから、スリッパや足ふきマットを使い分けるようにしましょう。トイレのスリッパなども共用ではなく、マイスリッパを使用してもらうべきですね。また、靴下を履いていれば大丈夫、と思うかもしれませんが、綿や絹など目の粗いものだと菌は入ってきてしまいます。足袋やウールのような表面の目が細かいものでしたら大丈夫です。また、菌は裸のまま床などに落ちていると、すぐ死んでしまいますが、垢の中に潜んでにいると年単位で生きてしまう。ですから、掃除をこまめにし、掃除機などで垢を吸い取るなどして、菌が生きにくい環境を心がけましょう。

水虫は、1か月で治る

 通常の急性型の水虫は、たいてい1か月程度で完治が可能です。ですから、水虫になってしまった場合、もしくは疑わしい場合には、皮膚科で見てもらうようにしましょう。また、民間療法も菌に対する効果が全くないというわけではありませんが、通常百害あって一利なしです。たとえば、酢がいいなどという話がありますよね? 実際、酢には菌の増殖を抑える作用があります。しかし、現在の水虫薬にはその1万倍の効果があるといわれています。酢に1万回につけるのと、これ1回塗るとどちらがいいですか、と患者さんに聞くと、たいていは薬を選びますね(笑)。ニンニクも菌の増殖を抑える作用がありますが、皮膚につけるとかぶれてしまう。実用的ではありませんね(笑)。

仲先生のワンポイントアドバイス

水虫と足のにおいは関係ない!?

水虫とにおいは、実は直接的には関係ありません。水虫の原因は白癬菌ですが、足のにおいの元は表皮の上の常在菌が皮膚から出た汗に含まれる脂肪皮脂酸を分解するため。だから、水虫菌がにおいの原因ではありませんから、必ずしも水虫の人は足がにおうというわけではないのです。ただし、どちらの菌も蒸れによって活発化します。ですから、菌が繁殖しやすい土壌がある、という意味では、水虫にかかっているとにおいやすいといえるかもしれません。

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